ケチ子おばさんの空色ハット

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テント泊デビューは三条の湯 山梨県丹波山村

8月終わりの猛暑、テント泊装備を詰め込んだ重いザックを背負い、ようやくテント場についた。受付をして、ザックからテントを取り出し、何とか頑張ってテントを張る。最近のテントは簡単に設置できるように工夫されているので頼もしい限りだ。

ようやくテントを張り終えようとしていた途端、突然激しい雷雨となった。真新しいテントの中に滑り込む。「ぎりぎりセーフ」。

 

 

山歩きで初めてテント泊登山をした。

初めてテントを張った。場所は山梨県丹波山村にある「三条の湯」テント場。行きたい山は「雲取山」東京都最高峰で、日本百名山にも選定されている山であるが、日帰りで行けない、近くて遠い山。

 

 

テント泊装備で山に行く

真新しいテントとシェラフ(寝袋)、マット、大型のザック。持っていく荷物を詰める。パッキングという言葉には程遠い詰め方。ザックが大きくて助かる。水分、食料、ライトや充電器も忘れてはいけない。ついでに、普段はあまり食べない小袋のおかきも2個入れる。

 

8月の終わりの暑さ厳しい中、テント泊装備が詰まった重いザックを背負い、約10㎞の道のりは結構きつい。お祭登山口より登る。険しい道のりではない。重いザックを背負っていても安心して歩ける。登山口からは林道を歩く。林道を歩くのはあまり得意ではなく、とても長く歩いているように感じる。重いザックを背負っていれば傾斜が緩やかな林道でもあまり早く歩けない。さらに、長いと感じてしまう。後に林道は行き止まりとなり、登山道に突入する。登山道は道幅が狭くなるが、歩くには歩きやすい。さらに山奥に進んだその先、深い谷の沢沿いに「三条の湯」はあった。沢の涼しさにホッとした。

 

暑かった為か、ザックが重かった為か、今までの山歩きで一番大変だったと思った。

明日は、三条の湯から雲取山に登る。雲取山まではさらに標高差1000mを登らなくてはならない。大丈夫か「私」。少し不安になる。

 

 

初めての幕営と雷雨

受付を済まし、テント場に降りる。ビールでもと、飲みたい気分を我慢して、先にテントを張る。テントを買った時に店員さんに教えてもらったことが次々に頭から出てくる。店員さんに感謝。同時に空は暗くなり雷の音がし始めた。テントを張れたのが先か、雷雨が先か、という絶妙のタイミング。テントの中に滑り込む。ぎりぎりセーフ。初めてのテントで雷雨とは「何だかなぁ」と思うが、テントは私が思うよりとてもしっかりしており、雷雨でもそんなに不安感はない。マットを敷いて横になった。どれくらいの時間だったであろうか。次第に雷鳴は遠ざかり、雨脚は弱まった。恐るおそるテントより顔を出す。暗くなっていた空は明かるさを取り戻し、青空が覗いていた。

テントより出て、自分のテントを眺めてみる。なかなか良い。あの雷雨にも物怖じなどせず余裕で耐えた貫禄を、誇らしげに私に伝えているようだ。今後も私と一緒に山に行ってくれる強い味方になってくれるに違いない。テントと私の間に信頼関係が生まれている。大切に使いたいと思う。沢をぼんやり見る。先ほどの雷雨で水かさが少し増したように見えるが大丈夫そう。やはり、標高1000mと高い場所にあるからなのかと思った。

雷雨中、半ば強制的に休憩時間となった為か、私の足も、疲れてしまった心も軽くなっていた。テント場より山小屋までは急な登り坂であるが、足取りかるく登れるようになっていた。

 

 

 

三条の湯

三条の湯はその名の通り温泉が有名である。時刻は16時。夕飯前に温泉に入ろう。少しウキウキしながらお風呂に向かう。温泉は、源泉100%のかけ流し、㏗10.3の高アルカリ性の「単純硫黄冷鉱泉」、薪で沸かされている。

初めてのテント泊を「三条の湯」にしたのは、温泉に入れることだった。ここは、とても評判の良い温泉である。やはり、初めてすることは、何かしら楽しみがあるほうが良い。

山小屋泊の人を含めて、女性宿泊者が少なかったこの日のお風呂は、貸し切り状態で入浴出来た。石鹸やシャンプーは沢の水を汚してしまう為使えない。かけ湯をして汗を流し、湯船に入る。気持ちいい。少しぬるぬるして、硫黄の匂いがするとても良いお湯。お風呂場の窓からは空と山が見える。まるで露天風呂気分。

湯船で肩まで浸かって一息つく。とても良く温まるので、腰湯や足湯等を繰り返して温泉を楽しむ。浴槽には湯の花が浮かんでいる。窓から「空」と「山」を眺めていると、ここまでの山歩きの疲れ含め、日常の疲れまでが癒されるような気がした。

 

 

山ご飯とビール

ゆっくり温泉を楽しんだ後、山小屋で缶ビールを買った。こんな山奥で、キンキンに冷えた缶ビールを手に出来る事をすごいと思う。

キンキンに冷えたビールを手にして、テント場に戻る。相棒のテントが待ってくれている。早速、ビールを一口。キンキンに冷えたビールの味は最高。と言いたかった。

先ほどの雷雨後、さらに涼しくなっていたので、ビールをテントの前室におき、テントの中に入る。温泉でほかほかに温まったので、テントは通気を良くして虫が入らないよう網のみ閉める。ザックの荷物を片づけて、再度少し横になる。スマフォで時間を確認すると17時。そういえば、ここは携帯の電波は入らない事を思い出す。バッテリー節約のために「機内モード」に設定する。予備のバッテリーは持参しているので、寝る前に充電すれば良いか。圏外だし。

夕飯はご飯を炊くと決めていた。温泉に入る前に、持参した無洗米はコッヘルで浸水している。炊く時間と蒸らす時間を考えると、そろそろ炊いたほうが良さそうだ。辺りが暗くなる前には食べ終わりたい。17時30分頃、山ご飯開始。まずご飯を炊く。ほとんど減っていないビールをちびちび飲み、火加減を観ながら炊飯。匂いも大事。ほどなくご飯の良い匂いがしてきた。付きっきりの炊飯。火からおろした後、タオルで包み蒸らす。蒸らし終わり蓋を開けた。米粒につやがあり美味しそうに炊けている。結構嬉しい。

お昼に棒ラーメンを作って食べようと思っていたが、なんとなく食べる機会を逃してしまい、持ってきていた材料がそのまま残っている。豚肉や玉葱、人参など。卵も2個持ってきた。豚肉は今食べないと腐ってしまうので、私の手抜き定番の豚玉丼を作った。野菜たっぷりの夕飯になった。美味しかったが、何だか食欲がわかず、ご飯は半分食べられなかった。

 

 

時間を長く感じた

夕飯を食べて、なんとなく片づけをしても18時過ぎで、寝るには早すぎる時間。とりあえず、テントに入って持参していた本を読む。買ったばかりの本なのに、なかなか本の中に入っていけない。こういう時便利なのが「ネット」。しかし、この辺りは圏外。

今まで、アウトドアの経験は無く、テントで泊まるのも初めての私は、こういう時間の過ごし方が解らなかったことに気付いた。

山の中にいるのはすごく好きで、一日の山歩きで8時間かかっても、苦痛に感じることは無く、むしろ山を降りることに寂しさを感じることもある。なのに、たった数時間をどう過ごして良いのか解からない。どうしようかなぁと、テントの中でゴロゴロした。こんなに時間が長く感じたことはない。19時半ごろになった時、もう一度温泉に入ろうと思い、テントを開ける。外は暗くなってきており、帰りには真っ暗になリそうだ。気温はさらに涼しくなっていて、Tシャツ一枚では寒く感じるので、薄手のソフトシェルを羽織る。ヘッドライトを持参して再度温泉に向かった。本日二回目の入浴も大変良いお湯で癒される。お湯につかることは、私のどこかで緊張している部分が和らいでいるようにも感じた。お風呂の窓から、夜が更けようとしている山を観る。辺り一面が暗くなっていたが、以外にも空が明るく感じた。

ゆったりとお風呂に入り温まった。消灯時間前の山荘の食堂では、ギターを弾いて楽しんでいる。ギターの音色がとても心地よく感じる。テント場に戻る道は、辺り一面真っ暗になっているので、ヘッドライトの出番だ。日もとっくに落ちているのに、明るく感じるその空で、星が輝いている。こんなに輝く星はここ最近は観た事ないと思った。

テントに戻り、シェラフ(寝袋)を出して中に入ろうとしましたが、温泉に入った後なので、体が温まり、シェラフどころでなくテントの中まで熱い。網戸にしてゴロゴロした。少しうとうと、目が覚めて、またうとうと、少し涼しくなり、テントを閉めたり、シェラフを出したり、うとうとしたりを繰り返した。

長く感じた時間は、空が、辺りが、明るくなった事で終わりになった。周辺では、テントをたたみ、出発する人もちらほらいる。山頂での日の出が観られるような空が広がっている。

テントから出て、お湯を沸かしてスープを飲む。ホッとする。沢の水で顔を洗い、卵を焼いて、朝ごはんを食べた。

さぁ、私も出発の準備始めないと。テントを片付け、荷物をザックに詰め込んで出発した。

 

 

何もしない時間。落ち着いて過ごせるか、過ごせないか。それには安心感が大きく関わると思う。そして、情報があふれる世の中で過ごしていると、情報がない事には戸惑うものだと感じた次第。ありすぎる情報には疲れてしまうのが本音。ですが、情報が一切ない状態になった時には自分の過ごし方が解らないことに気付いた。

 

山ビール

山歩きを初めてから、一度も山でお酒類を飲んだことはありませんでした。

私は、ビールを筆頭にお酒は好きですし、結構飲みますし飲めます(笑)。しかし、今までの山歩きは日帰りで、しかも車を運転していたので、山で飲んだ事は無かった。でも、飲みたいと思い、我慢しているという気持ちも無かった。それより、山を歩いた後のアイスが美味しくて、それのほうが楽しみになった。

初めて、山で泊まることになり、やっぱり「ビールでしょ」と飲んでみましたが、以外にも、美味しく感じられなかったのです。何だか残念感満載で言葉も無かった。

汗をかきすぎて「水分・電解質バランス」が崩れていたのかもしれません。食べ物や飲み物は、身体が必要としているものを摂ると美味しいと感じるものだと思うので、私の体はビールを欲していなかったのかもしれません。翌日帰宅後は、美味しくビールを頂きました(笑)。